欧州アクセシビリティ法(EAA)とは何か
欧州連合(EU)は、「障害の有無にかかわらず、すべての人々が製品やサービスに平等にアクセスできる社会の実現」を目指して、2025年6月28日に欧州アクセシビリティ法(European Accessibility Act:EAA)を施行します。EU域内のWebサイトを含むアクセシビリティの基準を明確に統一し、アクセシビリティの基準を底上げすることを目的に、2019年に採択されていて2025年6月に施行がはじまります。
欧州アクセシビリティ法の主な目的は、EU域内における製品やサービスのアクセシビリティに関する要件を統一し、障害者を含むすべての人々が平等にこれらにアクセスできる環境を整備することです。
対象となる企業
欧州アクセシビリティ法は、日本を拠点にして事業運営していても、EU域内のユーザーに製品やサービスを販売する場合は準拠が求められます。
対象となる範囲
適用対象は多岐にわたり、以下のような製品やサービスが含まれます。
- 製品:コンピュータやオペレーティングシステム、ATMや券売機、スマートフォン、テレビ機器、電子書籍リーダーなど。
- サービス:電子通信サービス、視聴覚メディアサービス、電子書籍サービス、電子商取引(オンラインショッピング)など。
これらの製品やサービスを提供する企業は、欧州アクセシビリティ法の定めるアクセシビリティ要件を満たす必要があります。具体的な範囲は「European Accessibility Act: Q&A」のページに以下のように記載されています。
Products(製品)
- Computers and operating systems(コンピュータとオペレーティングシステム)
- Smartphones and other communication devices(スマートフォンやその他の通信機器)
- TV equipment related to digital television services(デジタルテレビサービスに関連するテレビ機器)
- ATMs and payment terminals (e.g., card payment machines in supermarkets)(ATMおよび決済端末(例:スーパーマーケットのカード決済機))
- E-readers(電子書籍リーダー)
- Ticketing and check-in machines(発券機およびチェックイン機)
Services(サービス)
- Phone services(電話サービス)
- Banking services(銀行サービス)
- E-commerce(ECサービス)
- Websites, mobile services, electronic tickets and all sources of information for air, bus, rail and waterborne transport services(ウェブサイト、モバイルサービス、電子チケット、航空、バス、鉄道、水上輸送サービスに関するあらゆる情報源)
- E-books(電子書籍)
- Access to Audio-visual media services (AVMS)(オーディオビジュアルメディアサービス(AVMS)へのアクセス)
- Calls to the European emergency number 112(欧州緊急電話番号112への電話)
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ECサービスは対象として挙げられているため、2025年6月28日の期限までに欧州アクセシビリティ法のWebアクセシビリティ基準に対応する必要があります。
欧州アクセシビリティ法のWebアクセシビリティ基準
欧州アクセシビリティ法は、「Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1」を採用しているため、こちらに対応する必要があります。
- 知覚可能(Perceivable):情報及びユーザインタフェースコンポーネントは、利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。
- 操作可能(Operable):ユーザインタフェース コンポーネント及びナビゲーションは操作可能でなければならない。
- 理解可能(Understandable):情報及びユーザインタフェースの操作は理解可能でなければならない。
- 堅牢(Robust):コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢 (robust) でなければならない。
違反したときの罰則やリスク
欧州アクセシビリティ法に違反した場合、EU加盟国の各国の法律に基づいて罰則または罰金、警告などを受ける可能性があります。
また、民事訴訟のリスクも認識しておく必要があります。アメリカの例になりますが、日本のアパレル企業が2017年にWebアクセシビリティ未対応(Altタグ未設定・テキストリンクにリンク先情報がない、など)で訴訟を起こされています。UsableNetの報告によると、2023年には全体で4,605件まで提訴件数が上がっているのも留意が必要です。